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株価二極化に潜む「準大手の将来期待」の低さ カーライル・ジャパン元幹部が語る企業の現状

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近く運用を開始するファンドの狙いや日本株の先行きを語る大塚博行氏
カーライルで直近4~5年はカーブアウト(事業の切り出し)案件全般の責任者を担っていたニュートン・インベストメント・パートナーズ社長CEOの大塚博行氏(撮影:梅谷秀司)

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グローバルに4200億ドル超の資産を運用する投資会社のカーライル。その日本法人で副代表を務めた大塚博行氏が国内上場企業の株式で運用するニュートン・インベストメント・パートナーズを2023年7月に設立した。
近く数千億円規模で運用を開始する「ジャパン・アクティベーション・キャピタル」では、5~10%程度の株式を取得し大株主として、3~4年程度の期間、投資先企業をサポートする。ファンド立ち上げの狙いを大塚氏に聞くと、株価二極化に透けて見える企業の現実が見えてきた。

 

──日本株が歴史的な高値を迎えた中で新ファンドを立ち上げます。ファンドによる投資を通じて目指していることは何ですか。

変革の意思があるにもかかわらず、行動が伴っていない上場企業は少なくない。そういう企業を後押ししたい。

テクノロジーや人材、資金力では日本企業とアメリカ企業に差はない。カーライルで20年弱を過ごしてそう感じた。では何で差が生じているかというと、経営の実行力やスピード感だ。

この差によって日本企業は収益性などで劣勢となっている。売り上げがどのくらい伸びていきそうか、事業がどう変わっていっているのかなど、その企業の将来に対する期待感も乏しくなる。そうすると企業価値や株式価値の評価で用いられるマルチプルも低くなる。

準大手は低マルチプルのまま

──マルチプルとは、PER(株価収益率)や、企業価値が利払い前・税引き前・償却前利益の何倍かを示すEV/EBITDA倍率などですね。

株価を形成する要素には企業利益とマルチプルがある。足元の日本株上昇を牽引したのは、半導体関連と時価総額2兆円以上の超大手企業。その超大手では企業利益に加え、世界の投資マネーが日本に集まったことを受けてマルチプルも伸びている。

一方で、私たちが投資する可能性のある時価総額2000億~2兆円の準大手は、企業利益を増やしたがマルチプルは伸びていない。東証プライム市場で準大手の占める比率は時価総額、売上高ともに30%前後。それらが変わればインパクトは大きい。

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