度肝を抜かれた「小学校の怪授業」から得た教訓 なぜ人は文章を書くのか、なぜうまく書けないか

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我々のクラスの担任は怖かった。とにかく怖い教師だった。当時は現代では考えられないほど体罰などの暴力的な指導が色濃く残っている時代で、担任となったその先生はかなり暴力的な教師だった。

暴力支配というと言い過ぎかもしれないが、その教師は明らかに「恐怖」というエッセンスで児童を支配しようとする狙いがあった。一度も笑顔を見せないし、僕らがルールを守れなかったり忘れ物をしたりすると容赦なく鉄拳制裁が飛んできた。

それまでは自由奔放に日々を過ごしていて学校とは楽しいものだった。それが急に恐怖の対象となったのだ。その担任はいつもウロコみたいな模様がサイドに入ったジャージを着ていて、多くの児童がそのウロコ模様を見るだけで震え上がってしまうほどだった。

算数の時間に国語の教科書を朗読する担任

さて、このように担任が怖いから野良犬イベントに熱狂しなかったわけではない。やはりこのイベントは別格なので担任が怖かろうが怒られようが盛り上がるものだった。ただ、そのときだけは違った。明らかに教室の雰囲気がおかしかったのだ。

時間割によると、その時間は算数の時間だった。ウロコのようなジャージを身に纏った恐怖の担任もデカい三角定規を持ってきていたので、やはり算数の時間だったと思う。けれども、担任は平然と国語の教科書を朗読し始めたのだ。

僕らは狼狽した。やばい俺たちが間違えたんだと国語の教科書を出そうとしたけれども、そもそも、今日は国語の時間が設定されていなかった。だから誰も国語の教科書を準備できなかった。すべての教科書を置いて帰っているワンパクグループの男子だけが満面の笑みで教科書を取り出していた。

狼狽する多くの児童を他所に、担任教師の朗読が続く。時には黒板にオオサンショウウオのイラストを描いて理解を促すなど熱のこもった授業だった。ただ、やはりなんど時間割表を見てもこの時間は算数の時間なのだ。

児童たちは少しだけざわついたけれども、すぐに静かになっていた。先生が間違えるはずがないので、おそらく僕らが時間割変更を聞き漏らしていたのだろう、そんな雰囲気が蔓延していた。

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