テレビ局の株価が今になって「爆上がり」した必然 日テレの"発表"が引き金、キー局は軒並み高騰

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実は日テレでは今回の発表以前から、外国人の直接保有割合が20%を若干超えて推移する期間が長く続いていた。

日テレによると、新たな株主名簿を作成する際に外資比率が20%を超える場合には、前回の名簿に記載がある者を優先的に記載したうえで、残りを新たな株主の保有割合に応じて按分する形式をとっていた。そのため外国人株主にとっては、株式を取得したタイミングでは、議決権や配当を受け取れるか否かがわからない状況となっていた。

今回の定款変更によってこうした不確実性が軽減され、外国人が同社の株式を取得しやすくなる。

さらに日テレは、定款変更のリリースと合わせて、上限70億円(発行済株式総数の1.93%)の自己株取得も発表している。一般的に自己株取得を行うと、市場での発行済株式数が減少するため、既存株主の議決権比率が高まる。そのため、外国人株主の議決権比率が20%を超過し、配当を付与できなくなる懸念から、これまでは自己株取得をしづらい状況にあった。

日テレの自己株買いは2009年以来で、実に15年ぶりのこと。発表翌日、2月2日の同社の株価がストップ高となったのも理解できる。

他のテレビ局でも「連想買い」

しかしどういうわけか、2月2日には日テレだけでなく、すべてのキー局の株価が大幅に上昇する事態となった。

各局のIR担当者は「日テレ株価上昇の連想買いだろう」と口を揃える。同様の規定を定める日テレ以外のテレビ局も方針転換を行うのでは、との思惑が広まったとみられる。

もっとも、フジ・メディア・ホールディングス(以下、フジ)は株券電子化が行われた2009年から、株主名簿への記載を拒否した外国人株主に対しても配当を支払ってきた。同社の外国人株主による直接保有比率は2024年3月1日時点で34.25%と、以前から20%を大きく超えて推移している。

そのフジ・メディアも、足元の株価は年初から1割程度上昇している。定款変更そのものというより、テレビ局の間で資本効率の改善や株主還元強化の動きが加速することに対する期待感が、株価上昇を後押ししているようだ。

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