東武100系「元祖スペーシア」知られざる整備現場 部品外してメンテナンス、出場時「いちご色」に

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回転機職場の技術職場長、工藤亨さんは「100系は交流モーターなので直流モーターに比べてメンテナンスの作業量が少なく、故障しにくいメリットがある」と指摘する。班長の芳賀洋介さんは「全部で14種類のモーターを扱っていて、部品や治具、道具が違うので注意を払っている。100系のモーターは長距離を走行しスピードが出せるように当時の最新技術が用いられたと思う」と話す。

電機職場の技術職場長、宮野稔さんは「細かい調整などの作業が中心で、神経を使うことが多い仕事」という。技術員の廣澤秀朗さんは「神経を使う分、うまくいったときの達成感も大きい。整理整頓をする習慣はプライベートにも表れる」と明かす。

東武100系 主電動機
取り外された主電動機がずらりと並ぶ(記者撮影)

「いちごスペーシア」として出場

109編成は交換した部品などを取り付け、塗装や試運転を経て営業運転に戻る。入場時と異なり、赤とピンクのカラーリングとなって出場。車内は6号車のすべての個室と、2・5号車の15列目のシートをいちご柄の装飾に模様替えし、12月24日から約3年間「いちごスペーシア」として運行する。

いちこスペーシア
塗装を終えたスペーシア109編成(写真:東武鉄道)

いちごスペーシアは栃木県誕生150年を記念した企画の一環。これまでも同社は6月から1年間の予定で、東武宇都宮線に「『いちご王国』ライン」の愛称を付け、駅名看板の変更や、20400型「ベリーハッピートレイン」の運行といったPR策を展開している。

2024年1月14日には新鹿沼駅の駅舎を「いちごカラー」に装飾。同駅から東武日光駅へ向けて「いちごSL大樹ふたら」を初運行する。

スペーシアの109編成は装いを新たにして走り続ける。行く先々で注目を集めるカラーリングの誕生の舞台裏には、日々地道な作業を続けるメンテンス現場があることも覚えておきたい。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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