ミスミG、AI部品調達の「革命児」が教育現場で活躍 大学・高専の3割使用、AIが部品設計の「先生」に

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メビーに設計データをアップロードすると、物理的に加工できないミスがあった場合、どこに問題があるのかをAIが瞬時に指摘してくれる。

例えば、図面上ではうまく描けているように見えても、実際は穴と穴の距離が近すぎたり、曲げられない箇所を曲げようとしていたりするケースがある。こうした細やかなルールは従来、現場で覚えるものとされてきた。加工業者へ見積もり依頼を出し、「これでは作れない」と突き返され、データを修正してまた送る。その繰り返しで感覚的に体得していたのだ。

メビーはこの過程を丸ごと引き受ける。結果的に「設計の先生」となれることが、教育現場で注目を集めている最大の理由だ。部品を発注せず、見積もりにとどめておけば、すべての機能を無料で利用できることも大きい。ミスミGは教育機関向けのプロモーションは実施していなかったが、口コミで全国の大学や高専へ広まっていった。

「教える」スピードも人間とは段違いに早い。鶴崎さんが設計データを完成させるまでにアップロードしたのは計17回。「もし業者にお願いしていたら、おそらく最低1カ月以上はかかった」(鶴崎さん)ところ、わずか11日で作業を終えられた。

創造的な教育を生み出せる

近畿大の講義の様子(記者撮影)

鶴崎さんにメビーを勧めた近大ものづくり工房センター長の西籔和明教授は、「設計を教える方法について、今までのやり方だけでいいのか疑問だった」と打ち明ける。

通常の講義で3Dデータの設計を扱う場合、教員がお題を示し、それを学生たちが専用ソフトウェアで一斉に描く。「みんなが同じ物を同じプロセスで作るので、結局は入力の間違い探しでしかない」(西籔氏)。

背景には教える側の事情もある。教員数は学生数に対して少ないうえ、あらゆる部品に精通しているわけでもない。西籔氏は「教えられる範囲のことを取り扱うだけでは、グローバルで活躍する技術者は育成できない。より創造的な教育が必要だ」と力を込める。メビーを用いてロボットの設計を体験させるなど、授業での活用を模索していく方針という。

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