アース製薬「3000円殺虫剤」で市場に殴り込む事情 50年ぶりに新成分導入、ただ競合は冷めた目線

拡大
縮小

業界2位の大日本除虫菊(キンチョウ)でマーケティングを担当する奥平亮太氏は、「機能を付けていくやり方は、既存の消費者が移行するだけで、商品カテゴリ全体の売り上げ規模拡大にはつながらない」と懐疑的だ。人口減によって殺虫剤の国内市場は縮小しており、「殺虫剤市場全体のパイが広がらない限りは、その取り合いで疲弊していくだけ」と指摘する。

同社は過去に、プレートを吊るすタイプの先駆けとなった「虫コナーズ」を開発している。虫コナーズのように、「カテゴリとして存在しなかった商品を開発し、消費者に提供することで市場創出を図る」(同)スタンスだ。

一方、空間にプッシュする製品を初めて開発したフマキラー。同社でマーケティングを担当する菅谷洋介部長も「ここ15年ぐらいで見たときに革新的だったものは、(キンチョウの)吊り下げと、(フマキラーの)ワンプッシュだけだと思う」と語る。

効き目の長さで新しい顧客を開拓

ただ、ゼロデナイトのような高付加価値製品にも、画期的な機能の追加で市場を押し上げる力はある。

実際、ゼロデナイトは効き目の長さに対する期待感から、ファミリー層などの新規顧客を開拓し始めているという。今後も継続的に顧客が増え続ければ、1年予防という高付加価値が新しい市場を開拓したといえるかもしれない。

2022年の3~5月は予想外に気温の低い日が続き、気温に大きく売り上げが左右される殺虫剤市場にとっては向かい風だった。さらに6月末からは猛暑も到来。気温が35度を超えると蚊の活動が鈍くなり、これも逆風だ。これから需要が高まる夏本番に向け、アース製薬は熱い期待を寄せている。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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