野草を大量採取した私が陥った「悲劇的結末」 絶対やってはいけない「欲張り爺さん婆さん」

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でも本当はそんなことしなくても大丈夫なのだと身をもって教えてくれるのが採取生活なのだ。いやー貯められないってスゴイね! 貯められなければ分けるしかない。で、実際にやってみれば自分が損をするわけでもなんでもないとわかる。

「奪い合えば足りない、分け合えば余る」(沖縄のことわざ)体験は、案外あなたの行き詰まった人生を変えるかもしれませんよ!

と、このように案外奥が深い採取生活を深く楽しむために、もう1つ重要な助言をしておこう。

野草初心者へのアドバイス②「経験者を探せ!」

私のごとき採取のベテランともなれば、どの野草が食べられるかは見ただけでだいたいわかる。知らない野草であっても、なんといいますか「人相」ならぬ「草相」みたいなものがありまして、そこらの道端の草を見るだけで「あ、これなんとなく食べられそう!」とカンが働くのだ。

となれば早速、試しにちぎって臭いを嗅ぎ、「やっぱり菜の花だ!」などと、過去に採取したものの記憶と答え合わせ。そして、めでたく食卓に乗ることになる。

このように改めて書くと、やはり動物に近づいている気がしないでもない。われながらカッコイイと思う。

だが、初心者は決してこのようなことをしてはいけない。

植物とは、基本「毒」である。うかつに動物に食べられぬよう毒で身を守っているのだ。ごく一部が、なんとか人間にも食べられるものであるにすぎない。じゃあいったいどれが「食べられる」のか?

昔の人は経験と伝承を重ねることで、誰もがそのような知恵を備えていたんだろうが、食べ物は「店で買う」ことが当たり前になった現代人はそのような知恵をすっかり失ってしまった。そこらの草を目で見て、匂いを嗅ぎ、食べられるかどうかを判断するなんて、ほとんどの人が人生において一度もやったことがないに違いない。

なので最初は、田舎の人、農家の人、あるいは私のような「都会の狩人」など、そのような知識と経験のある人に教えを請い、一緒に採取することをぜひお勧めする。

野草にはそれぞれ好みの住環境というものがあり、どの時期にどの辺を探せば何があるかも少しずつわかってくる。ネットでいくら姿形を検索したところで、素人はそもそもどこを探せばいいのかさっぱりわからんからね。それがベテランと行くと、次々と目の前にご馳走が現れる不思議さといったら! それはワクワクする探検そのものだ。

さらには、お年寄り、田舎の人など、この変化の早い社会において、ややもすれば「遅れた人」とジャッジされがちな方々が、実はめちゃくちゃスーパーな知識を持っているということもうれしい驚きだ。

「役に立つ」とか「価値がある」とか、日々自分も他人もジャッジしながら一喜一憂してセコセコと生きているわれらの判断基準の小ささ、狭さを実感するのはなかなかに爽快なことである。

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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